2009年2月、カリブ海に浮かぶフランス領の島、グアドループ、マルティニックで史上最大規模のストライキが起こる。普段は観光客で賑わう南の島々でのこの出来事は、フランス本土に強い衝撃をもたらした。それは単に離島ゆえの物価高の是正を求める運動ではなかったからだ。本書はこの出来事のインパクトから出発し、大西洋をまたぐ奴隷制と植民地主義の血に染まった歴史をたどる。そこに描かれる無数の暴力と、同化/独立を願った民衆・知識人の苦闘は、世界史の新たな扉を開き、読む者を震わせるだろう。数百年におよぶ壮大なスケールと、政治社会から文学、音楽まで広範な領域をほとばしる筆致で描き出す、地域研究を越える圧倒的傑作。